大分県立芸術文化短期大学 平成28年度講義概要
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授業科目 担当教員名 開講時期 必修・選択 単位 授業形態 学科・学年
哲学 河津 邦喜
前期集中
選択 2 講義 美術科1年
音楽科1年
国際総合学科1年
情報コミュニケーション学科1年
■ 授業の目的・到達目標

 かつてNHKテレビで、ハーバード大学の哲学者マイケル・サンデルの抗議(授業で一部見てもらいます)が映され、日本で西洋倫理学が一大ブームになりました。その西洋倫理学の基本を学ぶことが目標です。抽象的な話になりがちなので、現実社会の諸問題を具体例にして解説します。先生が道徳のお説教をするのではありません。原発は伝統主義者からはどう意見され、貧富の差は功利主義者からはどう評価され、他人を助けるために嘘をつくことはカントによってどうみなされるのか、解説します。倫理学といってもどれも、特定の時代や社会や宗教の在り方の表現に過ぎません。そこで、どんな時代のどんな社会なので、これこれの倫理学説が唱えられた、という解説をします。そして、多くの重要な用語の意味を覚えてもらうことが目標です。

■ 各回の授業内容

1.生命倫理;パターナリズム対個人の自己決定責任(インフォームド・コンセント);癌の告知、延命治療拒否、積極的安楽死
2.生命倫理;個人の自由を道徳が制限する?;中絶、優性思想、生殖医療(滑り坂論法)
3.カントの義務論(動機主義・普遍化可能性・理性による感性の超克)とそれへの批判
4.ベンザムやミルの功利主義(帰結主義・効用=快楽主義・最大多数の最大幸福)とそれへの批判
5.事実の規範と区別;自然主義的誤謬、規範とは?情緒主義・規範主義(命令説)
モラル・パニックを煽る人々;1995年前後の日本の社会問題(援助交際、若者の道徳的  退廃、勉強意欲の衰退、オウム、凶悪殺人);伝統、近代、成熟、身分、大衆、分衆、生産、消費、の各社会システムの変化による説明
6.プラトンの『国家』(ソフィスト対ソクラテス);ギュゲスの指輪;ホッブス・ロック・ルソーの社会契約論
7.政治次元と経済次元での対立軸;保守(右翼)対 革新(左翼);市場原理至上主義 対福祉国家(平等主義)
8.フランス大革命、恐怖政治(テルール)、エドマンド・バークやアレクシス・トクヴィルの保守主義
9.ロールズの福祉国家リベラリズム(無知のヴェール・マキシミン原則);自由と平等を和解させる
10.ノジックのリヴァタリアニズム(身体への自己所有権の拡張版としての、財への私的所有権の絶対性)
11.サンデルのコミュニタリアリズム(不可なき自我への批判、共同体からの負荷のなかでしか選択できない)
12.マルクスの弁証法的唯物史観(生産力と生産関係・階級の利害対決・革命・イデオロギー)
13.ユダヤ=キリスト教とニーチェによる批判
14.日本での倫理的な議論の状況・用心すべき倫理的論法
15.まとめ

■ 準備学習等

教科書を繰り返し、暗記してしまうぐらいに、読んで下さい。授業中プリントを配布して、問題を宿題として出しますので、答えレポートを提出してもらいます。

■ 成績評価の方法・基準

期末試験と宿題レポートで評価します。

■ 教科書

デイヴ・ロビンソン『ビギナーズ倫理学』ちくま学芸文庫(特別価格1,100円)

■ 参考図書

大澤 真幸『「正義」を考える−生きづらさと向き合う社会学−』NSNHK出版新書339

■ 履修の条件・注意事項

授業内容の順序は変更することがあります。サンデルの講義など、いろいろVTRを見てもらいます。

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